誰もが子供のころからお世話になっている森永製菓株式会社です。甘いお菓子の会社ですが、経営を取り巻く環境は、少子化・人口減少で決して甘くはない筈です。
企業力分析(総合評価と下位指標)
2013年~2017年3月期まので5年間です。
左グラフ:営業効率 中グラフ:資本効率 右グラフ:生産効率
左グラフ:資産効率 中グラフ:流動性 右グラフ:安全性
企業力は力強く右肩上がりで、106.05P→111.63P→121.13P→139.95P→135.52Pと推移しています。2017年の失速は流動性の悪化が影響しています。その他の指標全てが改善トレンドで、問題ないでしょう。
また、2012年以前の分析グラフは出ていませんが、それまでのグラフは総合評価110P当たりでしたが、急に改善トレンド。これは社長交代があった可能性があります。調べてみると、新井徹氏が、2013年6月に社長就任されています。見事なV字回復はカルロス・ゴーン社長就任時とよく似ています(下グラフ・横軸は平成年度)。
営業効率(儲かるか)、資本効率(資本の活用度)はウナギ上りです。
生産効率(人の活用度)は2014年、若干の悪化がありましたが、それ以降は右肩上がりに転じました。
資産効率(資産の活用度)は安定して高いようです。
流動性(短期資金繰り)は赤信号領域からウナギ上りの後、2017年に失速。短期借入金の増加が原因ですが、営業効率が改善しており、問題ないでしょう。
安全性(長期資金繰り)は、着実な改善をしています。
内なる改革成功を証明する財務指標
見事な改善V字回復のグラフを見たときすべきは、年度比の確認です。下グラフ2013年度比推移です。経常利益2013年度比が、ダントツです。
売上を大きく上げたわけではないのに、M&Aなど大きな投資もなく優秀な人材を大量採用したわけでもないのに、利益だけが突出して上がっています。このグラフで見ると、売上がさほど伸びていないわけですから、利益の元は社内にあることを意味します。
成長セオリーどおり
2016年以降、売上高総利益率を改善させ、売上高営業利益率を改善させています。V字回復のセオリー通り、原材料費率の改善や業務の効率化を行っています。
人事戦略の推移と今後
生産効率を考察してみましょう。
正社員比率の長期データを示します。
ファーストリテイリングといえば、躍進が見事な会社ですが、正社員比率をどんどん上げています。会社を担う人材をしっかり育てる方針なのでしょう。
森永製菓の正社員比率は2005~2007年ごろは63~65%と高い水準でしたが、2008年以降下げました。コストダウンの必要があったのでしょう。
しかし、営業効率の改善に少し遅れて、正社員比率を高めてきています。また、それに従い、1人当たり売上高も回復し始めました。
派遣社員など、非正規雇用の割合を増やした時期は過ぎ、成長企業のトレンドは、大きく変化しました。人口統計ほど外れない統計はありません。コストダウンと言って派遣が増えた時期も、人口統計は、いずれ人材の争奪戦は厳しくなることを示していました。
森永製菓は、売上高利益率の改善で、正社員比率増でアップする人件費率の吸収を可能にし、少子化の逆境を乗り越えようとしています。
まとめ
森永製菓はベンチマークするのに適した会社であると思います。他社に比べ露出の少ない新井徹社長は、静かに、そして着実に歩を進めておられます。
SPLENDID21NEWS第142号【2017年9月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。