「見える化」の本が話題になっています。企業のさまざまなものを「見える」ようにして現場力の強化につなげようと主張しています。SPLENDID21は経営を「見える化」し、経営力を強化します。
少し話しは変わりますが、昨年なくなったP.F.ドラッカーは「企業の目的は存続・成長である」と言いました。社長は「企業の存続・成長」を目的に経営する為、ベクトルは明確です。このベクトルは組織参加者に共有され、行動されなければなりません。しかし、社長と組織参加者とでは経営の見晴らしが違う為、放っておいては一致する筈もありません。
今回は、松下電器産業をV字回復に導いた中村社長の経営判断を、SPLENDID21を用いて「見える化」してみましょう。
営業効率が悪い
あえて曖昧な表現をしました。松下電器産業の2002年3月の財務諸表にはそれが数字(4277億円の当期損失等)で表現されています。しかし、その悪さのレベルは見る人によってバラツキがあります。また、財務諸表を読む速度にも個人差があります。
SPLENDID21で松下電器産業の営業効率を見てみましょう。
松下電器産業の営業効率は雪印乳業の食中毒、BSEの時と同じくらい悪かったのです。それは危機的状況(マイナス5の底値)でした。一気に赤信号領域から飛び出さなくてはいけない状況でした。この認識が甘いと打つ手が甘くなり、改善は見込めません。
営業効率の悪さは、数値として計測し、他社と比較して表現すると断然判り易くなります。
営業効率が危機的状況でも安全性が随分良かったら、結局大丈夫じゃないの?
松下電器産業の2002年3月期の自己資本比率は40%を超えています。SPLENDID21の安全性は青信号領域上方にあり問題ありません。このような状況では労働組合は安全性が良いことを理由にリストラ不要を論じます。
しかし、営業効率、安全性など、良い指標も悪い指標も全部統合化して企業力がどうなったか見てみると2002年3月期の決算は30ポイント企業力が落ちていることが分かります。人間は1つの指標は比較的良く見えますが、複数の指標になるとぼんやりして見えなくなってしまいます。多変量解析は、このような人間の限界を補完しハッキリ「見える化」します。
なんのかんの言ってもそんなに悪くないんじゃないの?
2002年3月期の決算で松下電器産業の企業力総合評価は87.17ポイントとなり要経営指導領域にあります。60ポイント以下が破綻懸念領域ですから、まだまだそんなに悪い状況ではありません。
しかし、2002年3月期は企業力総合評価を30.08ポイント落としました。このまま来年も同じ決算をすれば、更に30ポイントの下落となり、破綻懸念領域に突っ込んでしまいます。
トレンドを認識しなければ企業に危機感は生まれません。危機感がなければ「火事場の馬鹿力」は出てきません。
悪化のトレンドをきっちり認識しましょう。
まとめ
人間は評価のものさしが曖昧である。
人間は複数バラバラに動く指標を統合化して認識できない。
できたとしてもトレンドを把握しないと、経営でもっとも大切な「危機感の醸成」ができない。
社長は「企業の存続・成長」を目的に経営する為、ベクトルは明確です。このベクトルは組織参加者に共有され、行動されなければなりません。しかし、社長と組織参加者とでは経営の見晴らしが違う為にギャップが生じ、ベクトルを一致させません。一致をリーダーシップに委ねるのは1つの方法でしょう。しかし、リーダーシップは人間力によるため、一朝一夕に手に入れられるものではありません。そんな時、手続き論を用いたり、ツールを使うことで解決できることもあります。
SPLENDID21NEWS第4号【2006年3月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。