今回は、株式会社電通国際情報サービスを分析してみました。電通国際情報サービスは、親会社電通と、子会社14社、関連会社4社により構成され、ITサービス(コンサルティングサービス・受託システム開発・ソフトウェア製品・ソフトウェア商品・アウトソーシング・運用保守サービス)と情報機器販売の6つのサービス品目を統合的に提供する情報サービス事業を行っています。
2010~2014年までの5年間を見ていきましょう。
企業力総合評価は、123.47P→146.80P→148.83P→159.10P→162.40Pと推移しています。下位の指標は、営業効率、資本効率、流動性が改善していますから、儲かって、財務体質が改善してきており、成長の好循環に入っていると言えます。
営業効率(儲かるか指標)は、2010年赤信号領域から急改善し、踊り場を形成した後、成長トレンドです。資本効率(株主評価)も同様です。2010年赤信号領域であっても、企業力総合評価が高く123.47Pと言うのは、財務体質が良いなど、土台を支える指標が良いからです。逆に言えば、日頃「土台」を作っていれば、電通国際情報サービスの様な「助け」がある会社になれます。
生産効率(人の利用度)は、青信号領域を変動しながらほぼ横ばいです。
資産効率(資産の利用度)は、青信号領域を安定しています。
流動性(短期資金繰り指標)は改善トレンドが確実です。
安全性(長期資金繰り指標)も高い位置で青信号領域です。
営業効率の下位指標を確認します。急伸・踊り場・成長トレンドの原因が分かるかもしれません。
2010年は営業損失が出ましたが、2011年減収増益で青信号領域に改善しました。電通国際情報サービスの様な財務体質の良い会社は、営業利益(売上高営業利益率)<経常利益(売上高経常利益率)なので、営業利益さえ見ていれば読めます。
電通国際情報サービスは、3セグメント(以下SG)で構成されています。
金融ソリューション・・・金融業界を対象とした各種金融サービスに関わるソリューションの提供
エンタープライズソリューション・・・人事・会計・生産管理分野を対象とした各種基幹システムに関わるビジネス系ソリューションならびに製造業の製品開発・製造分野を対象としたエンジニアリング系ソリューションの提供
コミュニケーションIT・・・電通グループとの協業による企業向け各種ソリューションの提供
これらSG別に売上高、営業利益率を調べてみました。
2010年時点で、営業利益率は、コミュニケーションIT、金融ソリューション、エンタープライズソリューションの順です。エンタープライズソリューションは、常に合計営業利益率より低く、大きな赤字なので、お荷物的存在です。その後4年間で、同順序で売上高を伸ばし、更に営業利益率を伸ばしました。但し、エンタープライズソリューションは営業利益率が改善したとは言えません。
コミュニケーションITは、電通グループとの「協業」による企業向け各種ソリューションの提供で、エンタープライズソリューションは、同じ企業向けであっても「協業」しません。電通国際情報サービスは、グループ会社の強みを出し合い、グループ全体でより付加価値の高い商品にして販売し、利益を上げていることが分かります。
エンタープライズソリューションの売上高推移を読んでみて下さい。営業効率が急伸した2011年は減収です。踊り場の2012年は増収、成長トレンドの2013~2014年は減収です。営業効率親指標の急伸・踊り場・成長トレンドの原因の一つはここにあるようです。
まとめ
電通国際情報サービスは、グループ経営で利益を上げています。グループ経営といっても、このようなシナジー効果を簡単に創出できるわけではなく、グループ間調整を高度に求められ、結果を出すには相当な組織力を要するでしょう。
儲からないSGは減収の方が企業力を上げる要因になることも明確化しました。
SPLENDID21NEWS第109号【2014年12月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。