今回はショーボンドホールディングス株式会社を見てみましょう。 (2007年まではショーボンド建設、2008年以降はショーボンドHDで分析しております) 中核子会社のショーボンド建設株式会社は、構造物のメンテナンス事業(橋梁、トンネル等の道路構造物、鉄道、電力、港湾、建築などの公共インフラ、民間インフラに対し、補修、補強に関する工事や製品開発から、販売・施工)を行っています。高度成長期に大量建設された資本ストックが50年を迎え、老朽化していることが追い風になっているようです。
企業力総合評価は、高い位置から更に成長をしています。成長の主原因は、右肩上がりの指標ですから、営業効率と特定され、順風であることが分ります。 営業効率(儲かるかの指標)は、2005年3月は赤信号に近かった所を見ると、この4年の伸びがすごいですね。 生産効率も上がっています。従業員数は944→930→937→932→825と推移しており、2009年大きく減らしました。 資産効率は赤信号領域にあります。投資が大きい会社は赤信号領域へ行き勝ちです。営業効率が急伸しているので、投資は成功しているのでしょう。赤信号領域でも問題はありません。 流動性(短期資金繰り指標)は青信号領域の天井あたりで潤沢です。 経常利益増加率は4期連続プラスです。常に増収増益です。 安全性(長期資金繰り指標)は、5期連続天井値です。
営業効率の指標をみてみましょう。
国及び地方自治体の財政が逼迫しており、公共工事は引き続き厳しい受注環境が続いています。そんな中、コンクリート構造物をはじめとする既存ストックの長寿命化推進による維持・補修補強工事や、民間インフラの補修補強工事に対して総力を挙げて受注活動に取り組み増収を確保したようです。 それと同時に、原価管理の徹底及び工事施工の効率化による生産性の向上等に取り組み、利益率確保をしています。 とどのつまり、攻守ともに強い会社と言えるわけです。
営業効率の下位指標の数字の推移を示します。
順調な成長を遂げる企業は、攻め(売上を上げる)守り(効率化し利益を残す)の両方に長けた会社です。そして得た利益で試験研究、新製品開発、新市場開拓など、2年後3年後の収益を上げるために投資するという循環です。 ショーボンドHDもこの例に漏れません。2009年に330百万円を試験研究に投じています。 1 ルーズライニングシート工法の開発 既設の農業用水路の水路内の水を漏水させない、水を円滑に流すなどの利水・水理機能の確保のための工法の開発。地震などの災害時においても、水を逸散することなく水量を確保できる機能が求められるため、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所と共同研究した。 2 シラン系表面含浸材の開発 道路構造物の予防保全の必要性が求められ、構造物の維持管理を計画的に実施する中で安価で容易に施工ができ、かつ相応の耐久性能が確保できる工法をこまめに施工することによって、トータルのライフサイクルコストを低減する工法。 3 トンネル目地部のはく落対策工法の開発 4 除雪車対応型伸縮装置の改良 橋梁の床版継目部に用いられる鋼製伸縮装置は、既存商品です。その技術を転用し、除雪車対応型伸縮装置(商品名:GLHジョイント)の鋼材重量の低減する技術。構造の見直しを実施し、性能を変えずに、形状のコンパクト化を達成した。
まとめ
景気後退に対して、売上確保の努力に加え、コストダウン、不採算部門の閉鎖など、対応に迫られることでしょう。これらは利益を確保するため、生き残るために必要なこと、と言うだけでなく、恐慌が終わったのち、自社が顧客に選ばれるための試験研究・研究開発の為の資金を捻出する為でもあります。
SPLENDID21NEWS第55号【2010年6月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。