「名前も言いたくないあの球団の色を変える予定はないのでしょうか?」と質問した阪急阪神ホールディングスの株主。当事者である子会社・阪神電気鉄道を取り上げました。同社は、鉄道事業、不動産事業スポーツ・レジャー事業(甲子園球場運営)を行っています。株主の利益は、企業の成長・発展により得られます。
急行電車をオレンジから黄色と黒のシマシマに変えれば達成できるのでしょうか。それとも・・・?
阪神電鉄の分析を俯瞰(ふかん)する
2017年3月期(個別財務諸表)までの5年間分析してみました。
企業力総合評価は、青信号領域を若干低位ですが安定しています。下位の各親指標は上の3つと下の3つで大きくイメージが異なります。上の3つの営業効率(儲かるか)、資本効率(株主視点)、生産効率(人の活用度)は、青信号領域を危なげなく推移しており、活力がある良い状況を示します。
下の3つ、資産効率(資産の活用度)、流動性(短期資金繰り)、安全性(長期資金繰り)は底値だったり、赤信号領域にどっぷりつかっていたり、赤青ゼロ判別にプロットされており、企業力総合評価が上がらないのはこれが原因であると考えられます。
資本効率を中心に考察する
今回は資本効率を中心に営業効率、資産効率、安全性を考察してみましょう。
下表から、営業効率(NO1~2)、資本効率(3~9)、資産効率(1,3)、安全性(3,4)の一部を推定できます。
[営業効率]
1の売上高は通期全て力強い増収、2の売上高経常利益率は、2015年に0.59%悪化したもののジワジワと伸びています。着実な増収とがっちり利益を確保、いいですね。
[安全性]
3の資産の合計額は2014年を除き増加しています。4の純資産合計は通期増加。2013年比は3より4が大きいので、資産規模拡大は「実(純資産)」がしっかりついていると判断できます。この2つから安全性の1指標である自己資本比率(純資産/総資産×100)が改善していることが分かります。
[資産効率]
1の売上高と3の資産合計の関係は売上高<資産合計。両者があまり変わらない業種が多い中、多大な設備投資を必要とする鉄道業はこのような不等式となり、資産効率は底値を這ってしまいます。
[資本効率]
さて、3~9の資本効率を構成する下位指標・数字の推移は2015年を除き、全て改善。ただ、2の売上高経常利益率が20.58%(2017年)の高水準なのに対し、6の総資本経常利益率は5.05%(2017年)と特別良いとも言えない数値となります。
財務分析に詳しい方ならお分かりと思いますが、鉄道事業は多くの設備を必要とするため、資産額は他の業種と比べ高額になります。ですから資産を分母とする資本利益率は売上高利益率に比べ低調になってしまうのです。
資産の膨張することでは同じ、金融機関
このような傾向は、金融機関の場合、もっと顕著に表れます。「えっ、銀行って店舗があればいいんじゃない?」いえいえ、貸金(資産)が信用創造で倍増していく上、売上高は貸金(資産)の数%の金利なので利益といえば更に少なくなり、売上高経常利益率>総資本経常利益率となります。
上記の営業効率、資本効率、資産効率、安全性から、阪神電気鉄道は成長の善循環を起こしているのがわかりますか。
まとめ
設備投資(NO3)をして、増収(1)になって、利益(5、8)が増え、純資産(4)が積み上がっていますね。設備投資の伸びよりも他の3つの伸び(2013年比)が大きいのですから、設備投資の成功が見て取れます。多資産性の鉄道事業はコツコツとした積み重ねで改善する息の長い事業と言えます。
破壊力抜群の阪神ファンに「株主」としての判断の一助となれば幸いです。
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SPLENDID21NEWS第140号【2017年7月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。