今回は、夢の街創造委員会株式会社(以下夢の街:現在の出前館)を分析しました。同社は、会員数約596万人、11,350店舗の加盟店(2014年3月末)を有し、自宅やオフィスで食事をする際に便利な日本最大級の宅配ポータルサイトを運営している。 サイトに訪れるユーザーは、ピザ・弁当・中華・寿司・洋食・酒・ネットスーパーなど多数のジャンルの出前サービス店舗から、メニューや“現時点でのお届けまでの待ち時間”等の情報を見て、特典付きで注文をすることができる。
地域密着、頼んで30分以内配達の超速インターネットショッピングサイトを覗いてみましょう。
企業力総合評価は、175.20→175.31→174.57→171.48→170.24と推移しています。すごく高いスコアですが、2012年2013年は悪化しています。その原因は大きく下がった指標、生産効率にあります。
営業効率(儲かるか)、資本効率(資本の利用度)は2012年2013年に悪化しました。
生産効率(人の利用度)は、2010年に急落し戻りません。この指標は、1人当たり売上高の影響度が高いので増収に対し、従業員が増えたのでしょう。従業員が増えれば給与が出ますので、営業効率が悪化するのも説明がつきます。
資産効率(資産の利用度)は、赤信号領域底値から2013年浮上しました。
流動性(短期資金繰り)、安全性(長期資金繰り)は、天井値です。2013年安全性が悪化したのは、自己株式342,492千円を買ったことが原因で、実質悪化とは言えないでしょう。
営業効率の下位財務指標を見てみましょう。新興企業らしく、売上は4年間で倍増しています。
2013年の売上増が727,244千円53.48%と急増しています。これは、同年5月、株式会社薩摩恵比寿堂(以下恵比寿堂)をM&Aして子会社化したことによります。
恵比寿堂は、機動的なコールセンターを運営し、高品質な焼酎を中心に、飲食店向けの通販事業を展開しています。また、「繁盛グッズ」と称するポスターやテーブルPOPなどの販促ツールの制作・販売など、飲食店向けマーケティングサポート事業行っています。
両社ともに、主要顧客の業態が飲食業の為、大きなシナジー効果を見込んでのことです。
恵比寿堂を調べてみました。
2012年4月期売上高1,932,874千円、営業利益70,411千円、経常利益72,470千円(売上高経常利益率3.75%)、当期純利益42,793千円、純資産263,440千円、総資産573,578千円(自己資本比率45.93%)です。数字を読んでみると、恵比寿堂は、利益が出ており、自己資本比率も良く、借金も少ない会社であると言えます。
恵比寿堂の従業員数は26人でした。2013年8月期の夢の街の従業員数の増加はこれを含みます。
M&Aの時期が同年5月ですので、恵比寿堂の売上は、夢の街の決算期8月までの4か月分の売上高しか合算されませんから、1人当たり売上は少なく計算されています。恵比寿堂の1人当たり売上高は、1,932,874千円÷26人=74,341千円ですので、夢の街のそれより遥かに大きく、2014年8月決算では、大きく貢献し、夢の街の生産効率は改善するものと思われます。
夢の街の売上高経常利益率の推移は、21.21%→20.67%→20.65%→16.23%→13.16%と推移しました。利益率は確実に悪化トレンドの会社です。そして、恵比寿堂は3.75%ですので、このM&Aは、
単純計算では営業効率を下げてしまうM&Aであると言えます。
逆に、生産効率を見てみると、夢の街は1人当たり売上高13,730千円、恵比寿堂は74,341千円ですので、生産効率を上げるM&Aであると言えます。
さあ、夢の街は、このM&Aで企業力は上がるのでしょうか。それとも、規模が大きくなったが利益率の小さい会社になってしまうのでしょうか。
しかし、ここで忘れてはならないことは、ここにシナジー効果の発現という経営者の力が加わるということです。今までお互いがコツコツと増やしてきたお客様にお互いの商材を流せば、新規顧客の獲得にかけるコストは少なくなりますし、お互いの商材を乗せれば増収を見込めます。
しかし、残念ながら、シナジー効果を含めた「未来」は夢の街にしか計算できません。
まとめ
企業が生き残っていくことは容易いことではありません。ましてや、数十年、百年の企業として残っていくには、これで大丈夫ということは誰も言えないのでは無いでしょうか。
それでも、今日では、M&Aという経営手法が誰にでも手に入り、選択肢が増えたことは喜ばしいことに思います。
時間の短縮、シナジー効果、後継者問題の解消、沢山のメリットがあります。
SPLENDID21NEWS第102号【2014年5月15日発行】をA3用紙でご覧いただきたい方は下記をクリックしてください。