今回はDVDレンタル最大手の株式会社ゲオ、子会社株式会社ゲオエステート(現在は子会社から外れました)を見てみましょう。
ゲオの取締役会が、経営不振に陥っていた連結子会社ゲオエステートの株式を大量売却し連結対象外とする協議を進めていた2010年11月、男性取締役A氏(53)が自己所有の自社株280株(2千数百万円)を売却していたことが分かりました。社内で株売却許可を申請したものの、「インサイダー取引に当たる可能性がある」として不許可になった直後に無断で売却していました。ゲオエステートの売却に失敗し、ゲオの株価が下落すると予測した為の行動でした。2011年7月になってニュースになりました。
総合評価を見て下さい。ゲオは、2007年から2011年まで順調に成長しています。
営業効率(儲かるか)は踊り場を作りながら、急成長し、2011年も踊り場です。
資本効率(資本利用度)も営業効率と同じ動きをしています。
生産効率(人の利用度)は下落しています。2007年から従業員が8,644人から12,221人へと1.41倍増加に対し、売上は2,257億円から2,530億円1.12倍に留まっているためです。
流動性(短期資金繰)は、不安定ながらも改善トレンドのようです。
安全性(長期資金繰)は、青信号領域を3期連続改善トレンドです。
ゲオエステートを見てみましょう。
総合評価は、2008年から真っ逆さま。2011年も同じトレンドで下落すれば、あと1年で破綻懸念レベルに落ちてしまう予断を許さない状況です。インサイダー取引の問題が起こった2010年11月の段階でもその傾向は変わりません。また、WARNINGが2つついています。点数上は79ポイントの総合評価ですが、実際は60ポイント以下の破綻懸念の経営状況と視察されます。
営業効率は、3期連続下落。2011年は赤信号領域ですが、赤字は免れています。経常利益4,034万円で売上高経常利益率1.39%です。
生産効率は天井値です。7人で29億円の売上を上げているわけですから、ビックリします。
問題は資産効率です。
資産が重く資産効率は底値です。何が重いか、棚卸資産です。
棚卸資産回転期間は、2008年16.11か月(月商4億円、棚卸資産67億3953万円)、2009年12.09カ月(月商8億円、棚卸資産99億7284万円)です。
棚卸資産といっても、不動産会社ですので、当然不動産です。
この重い棚卸資産の資金調達の為、流動性も安全性も問題の動きになっているというわけです。
ゲオエステートの無茶ぶりは2007年でも表れています。2007年の棚卸資産回転期間は12.58カ月です。5年前でも相当過剰な在庫を抱えていたことになります。
つまり、ゲオエステートは5年以上前から大きな問題が放置されたままの会社なのです。取締役の任期は2年です。本来、親会社であるゲオが、いち早くこの異変に気付き、それを正させるか、役員を入れ替えなければなりませんが、その形跡は見当たりません。
また、驚くべきことにゲオエステートは、2008年3月に上場・増資がなされ、2009年も増資されています。
読み進めていただき、お気づきになったと思います。
問題となっているのは、ゲオのインサイダー取引を行った取締役A氏です。ゲオが、ゲオエステート株の売却に失敗し、ゲオの株価が下落する前に、A氏が、内部者だけが知りえる情報で売りぬけたことは犯罪です。(実際はゲオエステート株の売却は成功し株価下落はありませんでした) しかし、問題のある経営状況を5年以上も放置し、そのままにされたことはもっと大きな問題ではないでしょうか。その間に上場・増資までしているのです。
まとめ
ゲオエステートはSPLENDID21で分析すると、相当悪い会社です。売却したこと自体は、ゲオは上手くやったと言えます。しかし、ゲオエステートの現在の株価を見ると、少ないながらも黒字経営の同社の問題点を指摘し、その深刻さを理解することは、一般には難しいのではないかと感じます。
SPLENDID21NEWS第69号【2011年8月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。