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あと何年遡れば?横たわる問題点 レナウン

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継続企業の前提の注記を付されていた株式会社レナウン、資金援助をしてくれていた子会社から5月15日民事再生の適用が申し立てられました。民事再生の「原因となる事実」は、手形決済資金8,700万円の不足だったというから驚きです。

経営状況俯瞰 レナウン

2006~2019年12月期までの連結財務諸表15年を診断してみました。2019年12月期は決算期を変更し10ヵ月です。それまでは2月が決算月でした。

 

レナウン 安全性

今回の遠因として、中国企業の山東如意の下に入って以降の経営の混乱やEC(電子商取引)の出遅れが言われています。
しかし、中国企業が関連会社になり影響を受け始めたのは2011年なので、それ以前から業績が悪かったのは明白です(営業効率参照)し、ECサイトが始まる以前の2007年から減収が始まっており(下青棒グラフ)、ブランドの維持が難しいか、もしくはブランド開発力に問題があった可能性があります。そうならばECサイトを構築しても売れない筈です。

近因として、山東如意の香港子会社から売掛金53億円を回収できなかったこと、コロナ禍による売上高激減などが言われています。

問題を定量的に探ってみましょう。

親指標のグラフからは「流動性、安全性の長期・短期資金繰り指標が良いのに、なぜ資金枯渇で民事再生か?」
または、「営業効率が万年悪く、コスト高体質で、コロナでの売上高激減に耐えられなかったのか?」などお感じの筈です。

3つの問題点 レナウン

レナウンのグラフの特徴は、
2019年12月は100ポイントほどで点灯したWARNING2つ
15年間どっぷりハマり続けている営業効率
ジワジワ悪化トレンドの生産効率 です。

まず、は利益剰余金がマイナスの為、点灯しています。2009年以降ずーっとマイナスです。

営業効率親指標から財務数値・財務指標にドリルダウンしてみましょう。下グラフを見て下さい。
2011年までの強烈な減収とそれ以降2018年までのまんじりと動かない折れ線グラフとジワリと下がる棒グラフ、2019年(2月)、2019年12月の急落・悪化。
売上高営業利益率は黒字であっっても2007年最高で1.54%であとは1%以下ばかり。赤字の年はマーカーを赤にしましたが、9回あります。
売上高で700億円、規模は十分にあったのですから、何とかなったのでは?

下のグラフを見て下さい。2011年にかけての減収より従業員数の減少が少ないことが読み取れます。それでは生産効率が悪化するのは当たり前で、人件費率が上がりコスト高となり、営業効率を悪化させる原因になります。ちなみにリーマンショック後の従業員減少は2社売却1社解散の影響と思われます。
5月28日、905名(2019年12月末)の従業員のうち、3分の1にあたる約300名の希望退職者を募集したと報じられましたが、遅きに失したといえます。2019年8月にも150名の希望退職者の募集を発表したが、「事業環境の変化を検証する必要性」などで10月に募集を中止した経緯があります。
レナウンは人員リストラをしたがらない会社といえます。リストラせずにV字回復させたいなら結果を出すしかありません。

まとめ

「旧態依然」という言葉がぴったり当てはまります。15年分析の中では人の問題を抽出出来ました。
それ以前から業績が悪いところから、もっと過去に遡る必要があります。
他社比較も大切ですが、自社の過去を総括することは自社に横たわる問題点をあぶりだし、改善の第一歩踏み出すきっかけになるのではないでしょうか。

編集後記 他社の傘下に入る場合、よく調べる必要があります。上場企業だから、規模が大きいからという理由でM&Aされ、なぜよく分析しなかったのだろうという後悔を時々聞きます。就職するときにも同じことが言えます。(^^♪ 文責JY
〒541-0052 大阪市中央区安土町1-6-19 プロパレス安土町ビル7階D号 株式会社 SPLENDID21
tel 06-6264-4626  info@sp-21.co.jp     https://sp-21.com

レナウンZoom解説会を致します。2020年6月23日19:00~
解説会に遠くからわざわざ来て下さる方もあり、今回Zoom利用で解説会をします。
上場企業らしからぬレナウンは、中小企業経営者の方にも他山の石となる示唆があるものと思われます。

財務指標は有機的につながっており、それは数字を見ているだけでは気づけません。
読めるか読めないかの分かれ目は1つ1つの積み重ねで決まります。1つ1つきちんと積み重ねましょう。
1.「老舗」はどこに現れているか
2.長期視点の問題点はどこか
3.財務指標相互間の問題点はどこか
4.隠れた問題点はどこか
5.役員会の無機能化はどこか

など

お申込みはここから

SPLENDID21NEWS第175号【2020年6月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

SPLENDID21NEWS第175号レナウン

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山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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