今回は105円均一の回転寿司チェーン「あきんど」「スシロー」を直営店展開する株式会社あきんどスシローを見ていきましょう。2006年4月に創業者の清水義雄前社長から、生え抜きの矢三圭史社長にバトンタッチしました。
※株式会社あきんどスシローは株式会社スシローグローバルホールディングスを経て、
2021年4月に株式会社FOOD & LIFE COMPANIESに社命変更しました
総合評価は、2007年9月期までは成長トレンドでした。特に2007年9月期は流動性を急改善させ、企業力をあげました。47億円増資し、43億円現金預金を増加させた為です。
飲食業は棚卸資産、売掛債権少ないため、流動資産が少なく、流動性が赤信号領域に沈んでいる会社を多く見ます。売上は現金で入ってくるし、材料などは今日明日使うだけですみ、仕入は掛けという、資金繰りには楽な業種に特有な状況です。あまり資金繰りに困らないのでそうしていると言えばそのとおりですが、その分倒産リスクも高く「多産多死の業界」と言われる所以です。
その点で、2007年9月期の増資は評価できます。
店舗売上の推移を見てください。あきんどスシローは順調に店舗売上を伸ばしています。店舗あたり売上が上がってくると出店数を増やしてきます。但し、店舗あたり売上は期末店舗数で割るので出店数が多い期は店舗売上がガクンと減ってしまうことは気をつけてください。
2002年に「コストカッター」システム(低コスト店舗運営の実現を目的とした単品管理システム)を導入し、最近では「自動供給指示システム」の導入を加速させています。レーン上に流れる商品の充実を図り、食べたい商品を最適提供するなど、店舗効率を改善し無駄を排除するため、システムの開発・導入に余念のない会社と言えます。
飲食店は優秀な人材を採用できない悩みを抱え、人材育成にも大変苦労されている会社が多く見受けられます。その問題をシステム力でカバーすることに成功しています。
高速出店の為にきちんと増資をして資金調達している様子が良くわかります。
儲けのもとである営業効率下位指標を見ていきましょう。
営業効率のグラフはほぼ天井領域を若干の悪化トレンドとなっています。しかし、新聞などではあきんどスシローは絶好調などとの評価を得ているのではないでしょうか。
上表の売上高、売上総利益、営業利益、経常利益など、実数で示される指標は4期連続増収増益で改善と言えます。しかし、売上利益率を示す、売上総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率は、改善・悪化がバラバラで、改善とは限りません。
企業力は「率」で計測しなければ、規模拡大か質改善か不明になります。率も良くなる指標もあれば悪くなる指標もあり、統合計算しなければ良くなったか悪くなったかは正確にわかりません。
細かいことのように聞こえるかもしれませんが、ひと握りの優秀な企業はここを見逃さないのです。
ただし、あきんどスシローは良い営業効率の会社であることに変わりはありません。
まとめ
競争力を高めるには、無駄の徹底排除が利益率を高めるポイントです。しかしどこに無駄が潜んでいるか、日常業務の中でその無駄を発見し、改善するのは至難の業です。それをすべて社員に求めることは、社員の能力にバラツキがあるため現実的ではありません。システムの力を借りて成功させる会社も少なくありません。
SPLENDID21NEWS第48号【2009年11月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。