今回は、居酒屋チェーンを展開する株式会社一六堂(いちろくどう)を分析しました。一六堂は、時計販売業から飲食業に新規参入し、アッと言う間に急成長しました。他業界からは先入観なく、行動できるというとても良い例です。
2003年から2012年2月期までの10年間を連続して分析してみました。
企業力総合評価は、58→80→137→157→127→135→130→137→132→136と推移しています。2006年までは爆発的成長をしています。その原動力は営業効率(儲かるか指標)の成長とそれに釣られての流動性(短期資金繰り指標)の改善、安全性(長期資金繰り指標)の改善です。
企業力総合評価は2007年にどんと下げ、以降130ポイント台で横並びします。理由は流動性を下げたからです。これはきっと理由があります。
また、営業効率は「天井値を目指し、谷を刻むと再度天井を目指し」を繰り返し、天井値にどんどん近づいているように見えますね。これが、一六堂の強みです。
安全性は安定的に天井値の近くになりました。
一六堂は1995年1月、時計販売業としてスタートしました。
翌年、飲食業を手掛け、2003年には、新潟県にて、2つの漁港及び1つの市場にて買参権(バイサンケン)を法人格で取得しその後、買参権を取得する漁港数等を増やしていきました。これに対して漁港等の買参権を取得していない同業他社は、漁港で直接鮮魚を買い付けることが出来ないため、自社の各店舗に鮮魚を届けるには一般的には複数の流通段階を通らなければなりません。利益率の点でも、鮮度の点でも圧勝する仕組みを構築したのです。一六堂は、当初時計販売業でありながら、鮮魚を鮮度の高いものをより安く入手する方法考え、実行し、営業効率の急成長を実現しました。異業種からの参入で、先入観がなかった為、買参権取得という発想が出来たのかもしれません。
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買参権の効果のほどを、該当する財務指標でみていきましょう。
グラフで見てみましょう。売上高総利益率に注目して下さい。
売上高総利益率は買参権の影響を一番大きく受けている指標です。
緩やかに上げトレンドで、73%前後でブレません。利益を取りに行く会社は、売上高総利益率の乱高下がありません。逆に言えば、利益に無頓着な会社は乱高下して、なんの為に働いているか分らない状況に陥るケースがあります。売上高総利益率は儲けの元ですから、これが高くなければ、あとどれだけ頑張っても結果が残せない可能性があります。
SPLENDID21は、決算書と従業員数で分析する定量分析です。決算書には、社長の経営そのものが数字として織り込まれます。つまり定性情報が数字として表現されています。しかし普通、人は数字を見て、定性情報を引きだすことは難しいのです。SPLENDID21は統計学と認知科学を付加した分析ですので定性情報は、データマイニングされ、イメージとして把握できるのです。
「安く新鮮な魚を仕入れたい。」と考えている(定性)一六堂の売上高総利益率は高くブレない(定量)のです。
まとめ
社長の思いが経営を決めることがわかります。貴方は、会社の成長にプラスになる思いを持って経営していますか。人には誰でも癖があります。その癖が、経営にとってプラスにもなればマイナスにもなります。貴方は自分の癖を客観的に分析し修正する術を持ちますか。
SPLENDID21NEWS第80号【2012年7月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。